特集 老人保健と老人福祉
老人患者の医療と福祉
川合 一良
1
,
堀川 幹夫
2
Ichiro KAWAI
1
,
Mikio HORIKAWA
2
1京都南病院内科
2京都南病院医療社会事業部
pp.688-694
発行日 1981年9月15日
Published Date 1981/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206381
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
わが国の人口構造は年々,高齢化し,1979年の老齢人口(65歳以上)は全人口の8.9%となった.1970年初頭,国連は高齢化した社会の指標を,老齢人口比率7%をこえるものと規定したが,わが国の現状はこのレベルをはるかにしのぐものとなった.人口問題研究所の予測によれば,20年後の老齢人口は西欧高福祉国なみの14.3%に達するとされている.しかも,フランスなどの諸国では,100年以上かかってゆっくりと人口の高齢化が進んだのに反し,わが国はわずか40年ほどの短期間に同じ階段をかけ上ろうとしており,高齢化社会は,わが国では既に現実のものとなっている.
このような急速な人口高齢化に対する行政の対応は,きわめて鈍い.故大平首相は日本型福祉社会論を提唱したが,これはわが国の美しき伝統とされて来た「家族の相互扶助機能」と「企業内福祉」に国の負担を肩がわりさせようとしたものであった.鈴木内閣はこの提唱を受けついで福祉の後退を策しているが,今回発表された第二次臨調にいたっては,高齢化社会についての将来ビジョンは全く提示されることなく,ひたすらゼロペース予算を貫こうとするものである.そして,老人医療無料制度をはじめとするこれまでの福祉のつみ重ねは,今やことごとく崩壊させられようとしている.
Copyright © 1981, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.