特集 老人保健と老人福祉
老人保健活動の新しい展開—武蔵野方式をめぐって
山本 茂夫
1
Shigeo YAMAMOTO
1
1武蔵野市福祉公社事務局
pp.695-699
発行日 1981年9月15日
Published Date 1981/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206382
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6月13日,厚生省が発表した昭和54年度の国民医療費推計によれば,国民1人当たりの平均医療費は94,300円であるのに対し,65歳以上の老人の一般診療費は299,900円に達したと報道されている.この老人医療費は国民の一般診療費の3.3倍に達し,その処理は政治課題のひとつになっているところであるが,老人医療費の内容をみるときに,入院費の比重が年々増加していることがうかがえる.昭和55年版厚生白書注1)により昭和50年と54年の老人医療費の伸びをみるならば,外来が1.79倍であるのに対し,入院は2.07倍であり,入院医療費の構成比も50年の32.5%から54年には35.3%と,その比率を高めていることがうかがえる.
老人医療費のこのような動向について,国民生活審議会の長期展望小委員会のメンバーである丸尾直美氏は,「悪しき見えざる手が浪費をもたらす1つの例は,無料の老人医療と貧困な社会福祉サービスのもとでもたらされる病院の過剰利用である.たとえば一方で入院が無料であり,他方老人ホームやデイ・ホスピタルや巡回ホームヘルパー等が不備な場合には,患者やその家族が合理的に行動すると,治療上必要とされる以上に入院日数を長くすることを選ぶ可能性がある.
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