特集 乳幼児健診—その現代的課題を探る
乳幼児健診と先天性代謝異常
北川 照男
1
Teruo KITAGAWA
1
1日本大学小児科学
pp.454-458
発行日 1981年6月15日
Published Date 1981/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206327
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■先天性代謝異常症の成因とその治療
先天性代謝異常症とは,遺伝子の異常により酵素蛋白に異常を生じ,そのために種々の症状を示す疾患の総称であり,これまでに数百種の疾患が報告されている.その成因を図示すると図のようであり,代謝障害の存在する部位の酵素の基質となる物質またはその異常代謝物質が蓄積するために障害が生ずる場合と,正常であれば当然生成されるべき物質が酵素障害のために形成されず,その欠乏によって障害が生ずる場合とに大別される.時には,五炭糖尿症のように,先天的な酵素の異常が存在しても,何ら臨床症状を示さない場合もあるが,大多数の代謝異常症においては何らかの障害が認められ,とくに脳障害や肝障害などが高頻度に認められる.そして,そのほとんどに,現在のところ有効な治療法がなく,その組織障害は不可逆的に進行するが,ごく一部の疾患においては,不可逆的な組織障害が生ずる以前に診断すれば,治療が可能である.
成功しているか否かは別として,これまでに何らかの治療が試みられている疾患としては表1のようなものがあり,それらの治療方法は食餌療法,薬物療法に大別されている.臓器移植や酵素輸注療法もごく特殊な疾患に行なわれているが,これらは全くの試みの段階で,臨床的な改善は認められていない.
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