特集 抗菌薬の考え方,使い方—ホントのところを聞いてみました
呼吸器感染症
マイコプラズマ肺炎
皿谷 健
1
1杏林大学呼吸器内科
pp.950-954
発行日 2016年6月10日
Published Date 2016/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402224204
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Question 1
最近マクロライド耐性のマイコプラズマ肺炎が増加していると聞きます.こういう患者さんにはマクロライドは無効なんでしょうか? ホントのところを教えてください.
まず,マイコプラズマ肺炎の全体的な感染機序を知る必要がある.Mycoplasma pneumoniae(以下Mp)は気道上皮にP1蛋白を介して接着し,過酸化水素やBasemanらが近年報告したCARDS(community-acquired respiratory distress syndrome)toxinの放出も気道上皮障害に関与している(図1)1).
さらに障害された気道上皮から放出される種々のサイトカインが好中球を誘導し炎症が惹起される.Mp自身による気道上皮障害のほか,Mpの菌体成分(リポ蛋白)は肺胞マクロファージのTLR-1,2,6で認識され菌体成分に対する宿主側の免疫応答による炎症が出現する.肺炎と一言で言っても,菌自体の障害と菌体成分に対する宿主の過剰な免疫応答による炎症の側面がある2).元来Mp感染は7割が自然治癒傾向を認め,肺炎に進展するのは10%程度であり,兄弟で同時期に発症して一人は上気道炎症状のみで治癒し,一人は入院が必要な肺炎となった,などといった状況は,宿主の免疫応答の差を示しているのかもしれない.
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