特集 社会保障と公衆衛生の接点をさぐる
ろんそう
社会保障・公衆衛生相互の問題点
生活保障,医療保障,公衆衛生のバランスをとれ
田波 幸男
1
1日本公衆衛生協会
pp.378-380
発行日 1966年7月15日
Published Date 1966/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203278
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社会保障と公衆衛生との分離
社会保障と公衆衛生はいかなる関係にあるか,両者の接点をどこに求めるべきか,の2点については,さしずめ,第1の問題は,形式的なものであり,第2が,実質的な点であると考えてよい。
まず,最初の,公衆衛生と社会保障の形式的な関係では,結局は両者の定義の問題に帰着するが,公衆衛生の定義はよく知られているとおり,ウインスローの定義がもっとも広く,国際的にも通用している。これは相当長いものでもあり,よく知られているいることでもあるから,ここではくり返さない。この定義を,社会保障との関連という点からいえば,その中の数多い公衆衛生の目標の1つとして,「地域社会のすべての人たちに,健康を保持するに足る生活水準を保障する社会制度の確立」を目指すということがいわれている。これは,今日でいう社会保障と全く同じことといってよいであろう。また,憲法でいう「健康で文化的な最低限度の生活」の保障といい直しても,一向さしつかえないように思われる。ウインスロー氏の定義を採用する限り,公衆衛生という概念の中には,社会保障の概念を完全に包含するものである。これは,当然すぎることなのであるが,逆に,この部分をこの定義からとり去ってしまっても,公衆衛生の定義として非常に欠陥のあるものとは思われない。
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