講座 感染症とワクチン
【Ⅰ】麻疹と麻疹ワクチン—最近の話題
杉下 知子
1
Chieko SUGISHITA
1
1東京大学母子保健
pp.351-358
発行日 1980年5月15日
Published Date 1980/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206089
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ワクチンがひとつの感染症の予防手段として極めて有用であることはいうまでもない.また,その普及とともにその感染症の流行様式が変化し,今まで気づかなかったことが問題になったりする.たとえば,麻疹ワクチンが普及すると罹患年齢が低年齢化したり,逆に未罹患のまま成長して高校生や大学生などの間での罹患が生じ,大人の臨床像などが問題になってくる.ワクチンの恩恵で一般小児の感染が減少すると,今度は,ワクチン禁忌者の麻疹罹患の際の重篤化が問題になってくる.このような問題はワクチンで予防し得る感染症に共通している.この講座では,ここ数年に各国で発表された学術論文を紹介しながら,麻疹,風疹,百日咳などの感染症のおかれている現況を考察してみたいと思う.また,わが国のワクチンの現状についても簡単な説明を付記するので,役立てていただければ幸いである.
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