連載 All about 日本のワクチン・2
麻疹ワクチン—成人を中心に
中村(内山) ふくみ
1
1東京都立墨東病院感染症科
pp.150-153
発行日 2023年2月15日
Published Date 2023/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209992
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1.当該疾患の発生動向
麻疹は麻疹ウイルスによる全身感染症である。高熱、倦怠感で発症し、咳、咽頭痛、結膜炎などのカタル症状に引き続き発疹が出現する1)。肺炎、中耳炎、クループなどを合併することが多く、回復期に発症する麻疹脳炎は肺炎とともに麻疹の2大死因と呼ばれている。麻疹は空気感染、飛沫感染、接触感染のいずれの経路でも感染する極めて感染力の強い感染症であるがワクチンで予防可能である。
国内の麻疹発生動向を図12)に示す。2006年から開始されたワクチン定期接種率向上のための対策や未免疫者に対する免疫付与、麻疹患者発生時の迅速な積極的疫学調査と感染拡大防止対策によって、2015年3月に麻疹排除状態にあることを世界保健機関西太平洋事務局から認定された3)。排除認定後は輸入例や、輸入例を発端とし周囲の感受性者を巻き込んだ集団発生例が散発していた。2019年の麻疹患者報告数は排除認定後最多の744人に上った。しかしCOVID-19の流行による水際対策で国際的な人の往来が激減するとともに国内の麻疹患者報告数も低下した4)。2020年は10例、2021年は6例、2022年は11月8日までで6例の報告にとどまっている2)。
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