特集 公衆衛生における栄養
食生活改革への支援方法
坂本 弘
1
Hiroshi SAKAMOTO
1
1三重大学衛生学
pp.110-114
発行日 1980年2月15日
Published Date 1980/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206025
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■はじめに
ひもじさをしのぐために口に入るものを探し求めた時代,栄養価のすぐれた食物を指向した時代,変化に富んだ食事で栄養素バランスを求めた時代,そして過剰摂取に対応しなければならなくなった今日というように,ここ35年くらいの間にわが国の食課題は急テンポに変化してきた.これを戦争の傷跡からの脱却過程,すなわち一過性の出来事とみるよりも,むしろ社会の進展に伴う現象推移と認識したほうが将来展望を容易にする.Frederiksenは時代の推移に伴う保健上の諸問題を論述し,その中で栄養状態側面を挙げて,社会の近代化による変遷過程を示している1),このことからもわかるように食課題は時代や社会の影響を強く受けるものといえる.
現代の食課題は,豊かで老化した社会の産業化した経済のために,食物が豊富で過剰栄養となることであるという1).しかし,この課題がいつまで続くかの予測は立てにくい.資源の有限性がいわれ出してから,人口,食糧,資源,汚染などの関係が論議され,比較的近い将来に地球的規模での食糧危機到来がいわれている2).したがって本稿では,当面する食課題内容に関連した改革を論ずるというよりも,人々の食生活が改革に迫られた場合における,人々のそれへの適応に焦点をしぼって概説することにしたい.
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