特集 心身障害児
障害児教育の問題—奥中山学園の経験から
本庄 義雄
1
1(岩手県)奥中山学園
pp.711-714
発行日 1979年10月15日
Published Date 1979/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205946
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■障害児にされてきた子どもたち
旭君が学園に入園したのは,今から4年前,8歳の時でした.ヨチヨチ歩きでオムツをつけ,言語はありません.要求や不満を表わすのに,舌をギーギーと鳴らしたり,頭をこぶしで強くたたいたりするのでした.不思議なことに,日中頻繁に尿をもらしているのに,夜尿が全くないのです.
旭君の家は,生活を維持するため動ける大人はみんな,農作業につかなければならない状態でした.祖母が,寝たっきりの祖父と炊事,そして旭君の子もりを引き受けていたのです.しかし,看病と炊事に追われて旭君の子もりまで手がまわらなくなり,旭君がやっと立てるようになった3歳の頃,家の真ん中の柱に,2メートル位の帯でつないだのです.そして,そんな彼をなぐさめようとテレビをつけ,おやつを与え,母親は昼と夕にむれたオムツを取りかえてやるのでした.脳をはじめ身体の諸機能が全般にめざましく成長発達する幼児期の旭君の環境はそうだったのです,それに加え,母親を呼ぶ手段として,舌をギーギー鳴らしたり,自分の顔や頭をこぶしでおもいっきりなぐって,ギャーと泣くことが身についていったのでした.
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