特集 地域精神衛生活動
拡大する地域精神衛生活動の課題
大原 健士郎
1
1浜松医大精神神経科学
pp.156-163
発行日 1979年3月15日
Published Date 1979/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205790
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■はじめに
筆者が社会精神医学に関心を抱き出してから,すでに20余年を経過した,当初は,社会病理現象に,精神医学の分野からいかにしてアプローチすべきかに腐心したものである.そして次には,精神病理現象に社会的な因子が,いかに関与しているかを考えた.
筆者自身としては,精神科医に対しても,また社会学者や公衆衛生畑の学者に対しても,かなりの不信感を抱いていた.抱いていたというより,いまだに疑問を抱いているといった方が適切かもしれない.というのは,精神科医,とくに精神病理学者は,数少ないケースから思弁を発展させて,結論を導き出していく傾向があるからである.そのケースが全体の中でどのような地位を占め,どのような意義を持っているかには,無頓着なのである.もちろん,精神病理学領域にもすぐれた研究は多い.それらは,全体を直観的に鋭く見抜き,巧みにケースを駆使している,しかしこれは,数少ないすぐれた精神病理学者にして,はじめてなし得る業なのである.
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