特集 小さなコミュニティにおける公衆衛生活動—方法論を中心として
小さなコミュニティにおける公衆衛生活動の問題点と今後の展望
豊川 裕之
1
1東京大学(保健学科)疫学
pp.76-81
発行日 1979年2月15日
Published Date 1979/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205771
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■はじめに
保健所が曲がり角に立っていると言われるようになって,既に久しい.保健所のあり方が問われるようになった原因は,いろいろ挙げられる.たとえば,医療水準や生活水準の向上に伴う地域住民のニードの変化に保健所が十分に対応し切れなくなったことが,基本的なものであろう.そして,それらの水準が向上したことによって派生的に生ずる諸事が保健所の立地条件を変質させ,その対応をますます困難にしたことも考えないわけにはいかない.しかし,公衆衛生学の専門家として,看過できない理由がもう1つあると思うのである.それは,公衆衛生学において,保健所の実務にとって主たる対象になる小さな地域集団に対する方法論が,確立されていないことである.
保健所には,年報として行政報告書にまとめることのできるものもあるが,実際には管内の健康障害を抱えた地区は小さな人口規模のものであって,そこにおける保健活動や公衆衛生活動について,しっかりした方法論ができあがっていない.
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