論考
後水晶体線維増殖症(早産児の網膜症)の多発と学会の社会的責任
尾沢 彰宣
1
1川崎幸病院産婦人科・東京医科歯科大学難治疾患研究所
pp.373-375
発行日 1977年5月15日
Published Date 1977/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205391
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
高濃度酸素供給との関係―その解明の歴史―
後水晶体線維増殖症(Retrolental fibroplasia,RLF)は,1942年Terryが最切に記載1)し,1944年命名2)した疾患で,その後1949年,Owens & Owens2)が,Terryの命名したRLFが綱膜の病変に始まる一連の疾患である網膜症(Retinopathy)の最終段階であることを報告した.当時,アメリカでは本症を新生児の失明の原因となる疾患として重要視していた.
1951年,Campbellは,本症の発生が吸入用酸素の消費量と関係があることを調査推定し,1952年,Crosse,Ryanは,臨床的に高濃度の酸素の供給との関係を指摘した.1954年には,Ashtonは,高濃度の酸素が網膜に有害であることを病理学的に解明し,1955年,Rossier,Bingも酸素の原因論を発表している.1952年のPatz4)の臨床実験ならびに1956年のKinsey5)の計画人体実験などにより本症と酸素との因果関係が確実となったが,1957年,Patz6)は,RLF発生原因として環境酸素濃度説を確立し,すべて酸素は酸素分析器によること,酸素の記録は病歴として記載すべきこと,酸素は医師の指示で投与すべきであり,流量の代わりに濃度で指示すべきこと,臨床反応を満たす最低の濃度とすべきことを提言した.
Copyright © 1977, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.