特集 アメリカ公衆衛生200年
アメリカ合衆国における公衆衛生卒後教育の動向
染谷 四郎
1
1国立公衆衛生院
pp.760-767
発行日 1976年11月15日
Published Date 1976/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205292
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はじめに
近来,社会経済の急激な変化に伴って,公衆衛生分野において多くの難問が続出しており,これらの問題に対する適切な対策が国民から強く要請されている.このことは先進国,開発途上国とを問わず,問題の性質には若干の相違はあるとしても世界共通の現象である.特に先進国においては,人口の老齢化が進み,疾病構造が大きく変わり,保健サービスの需要がますます増大している.また,国民生活,衛生知識の向上は,より高度の保健サービスの要求へといっそうの拍車をかけている.さらに,最近の工業化・都市化の傾向は,従来見られなかった環境汚染などの新しい公衆衛生上の問題をひき起こしており,総合的な保健対策が必要となっている.
このような傾向はアメリカ合衆国においても全く同様であって,非伝染性の慢性疾患,職業病などが注目されるようになり,また,環境衛生,産業衛生および精神衛生上の対策の必要性が叫ばれている.さらに乳幼児の疾病は著しく減少しているが,家族計画など人口問題が重視されている.このように,公衆衛生の問題が大きく変わったからといって,急性伝染病,食品衛生などの対策を軽視してよいというわけではない.最近,Floridaに腸チフス患者が発生したり,TexasやSeatleにジフテリアが流行したり,内陸の某都市にポリオの発生源が発見されたりしているという.また,若年齢層の性病の多発,食中毒の発生などが報告されている.
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