特集 医学教育の中のコミュニティ・ヘルス
コミュニティ・ヘルスの重要性
館 正知
1
1岐阜大学医学部公衆衛生学教室
pp.226-232
発行日 1976年4月15日
Published Date 1976/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205159
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
コミュニティ・ヘルスという言葉をどのように日本語におきかえるかで,その重要性の議論が変わってくる.私はコミュニティ・ヘルスとは「個人の健康」(individualないしはpersonal health)に対する「集団の健康」という概念と理解している.したがって,ここでは集団の健康を確保しようとすることが集団を構成している個人にとっていかに重要であるか,を議論すればよいように思われる.しかし,本誌の読者にはそのことはもはや多くの言葉を必要としないほど十分に認識されている.また人々の健康問題を,個別的に解決する方法のほかに,同じ問題をもったグループの問題として,地域社会の問題として,地方または国の行政的ないしは政策的な問題として,解決する方法のあることをも承知している.そして個別的な解決手法と集団的な解決方法とでは,当然アプローチの仕方が異なることも承知している.
今,コミュニティ・ヘルスを「地域保健」という言葉におきかえると,今日の日本ではたちまち別の概念になる.すなわち,国民の健康問題を地域社会の問題として解決してゆくことを意味してくる.個人の健康問題を健康の保持・増進から,疾病・傷害の予防,治療,後療法,リハビリテーション,福祉までを含めた一連の現象として把え,もしそのいずれかに解決を要する問題があるならば,それを地域の問題として把え,かつ解決してゆこうとする方法論の議論になる.
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.