連載 公衆衛生の道・6
渋谷保健所
山下 章
1
1束京医科大学衛生学公衆衛生学教室
pp.659-663
発行日 1975年9月15日
Published Date 1975/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205083
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渋谷保健所に就任して真先に開かれたのが三法(旅館業法,公衆浴場法,興行場法)運営委員会であった.「鳩森小学校の前につれこみ旅館を許可するとは何事だ」「静かな住宅地域であった千駄谷が,保健所のおかげでさかさくらげの旅館街になってしまった」「保健所は業者の味方で,住民の敵だ」といった住民感情が沸騰しているさなかであっただけに,三法委員会は大変つめたい雰囲気であった.新所長の考え方はどうか,どういう方向で行政をやってゆくのか,といった詰問ぜめに合った.ことばで御返事するより,行動でお示ししたい.しばらく時間を貸してほしい.という私の返答にも大変に不満の様子であった.
人口28万1区1保健所,しかも渋谷駅を中心とする繁華街は,ようやくやみ市,バラック建から区画整理をされ,恒久的建築へ転換の最中であり,四谷とは比べものにならないほどスケールも大きいし,業務も繁雑であった.1日1日がただ雑務に追われるだけで終ってしまう.三法委員会で大見得は切ったものの仕事らしい仕事が手につかないまま,時間だけは過ぎてゆく.
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