調査報告
昭和48年度厚生省による魚介類摂食指導の人体毛髪中水銀蓄積量に与えた影響(第1報)
水野 忠興
1
,
磨田 裕
1
,
荻野 満春
1
,
小山 照夫
1
,
高木 信嘉
1
,
中森 昭敏
1
1横浜市立大学医学部MIV
pp.483-486
発行日 1975年7月15日
Published Date 1975/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205043
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はじめに
昭和48年3月熊本大学水俣病第二次研究班が提起した有明海のいわゆる「第三水俣病」問題は,同年春から夏にかけての水銀汚染魚騒動のきっかけとなったが,環境庁水銀汚染調査検討委員会は翌49年6月,この「第三水俣病」に対し臨床面から現時点では水俣病患者とは診断されないとの最終結論を出している.「第三水俣病」認定の是否はさておき,それが惹起した例の水銀汚染魚騒動の人体生理に及ぼした影響を疫学調査することが我々の目的である.即ち,厚生省はメチル水銀の暫定的摂取量限度と魚介類の水銀の暫定的規制値を制定したが,週間許容摂取量の変更等,国民の疑惑を招くような不手際も手伝って騒動を一層あおる結果となり,国民は各自のやり方で自衛手段を講ぜざるを得なかった.ある者は極度に魚介類の摂取を控え,またある者は一担控えた摂取量をやがては元の量にもどし,また最初から規制等を一向に気にせず摂取量に変化のない者もいた.これらの摂取態度の違いは人体に大きな影響を及ぼしたのだろうか.魚介類摂取量を控えた者は,量を減らさなかった者に比べて体内水銀蓄積量が減ったと言えるのだろうか.また魚介類摂取量の普段から多い者は少ない者に比べて体内水銀蓄積量は多いのだろうか.こうした疑問に対する調査の一手段として毛髪に蓄積した総水銀量を測定した.
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