特集 第15回社会医学研究会
特別討義
保健所再編をめぐって
小栗 史朗
1
,
相磯 富士雄
2
1名古屋市千種保健所
2国立公衆衛生院衛生行政学部
pp.672-679
発行日 1974年12月15日
Published Date 1974/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204929
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昨年の第14回社会医学研究会は,曽田長宗の特別講演「地方自治と公衆衛生」を基調にして,地方自治体と保健医療をテーマとした.
その中で相磯富士雄は,衛生行政や保健所問題を考える場合,日本資本主義の進む方向やそれらを推進させる国家政策の基本的方向づけをみる必要があるとして,戦後の保健所の3つの転換点を指摘し,現在の保健所再編を歴史的に,また国家政策的に位置づけた.すなわち,28,9年頃のシャープ勧告に基づく地方自治体の緊縮財政政策により,保健衛生関係予算が頭打ちにされた時期を第1の転換期とする.これは朝鮮戦争特需を経てアメリカ従属の経済型となり,石油化学工業化を中心に重化学工業を中核とした産業経済の転換の推進,石炭より石油へのエネルギー転換の推進という背景がある.第2は,型別保健所や共同保健計画がうち出されたところで,所得倍増計画がスタートし,日本独占資本主義の強化のための高度経済成長政策が確立した時期であり,産業構造の強引な転換の矛盾が"公害"過疎過密問題となって表面化してくる.第3は,新日本全国総合開発計画が固まり,基幹保健所構想がではじめる44年頃で,コンピュータ等を中心とした情報産業に,生産財中心から消費材中心の流通機構に,石油エネルギーから原子力エネルギーへと転換が計られてくる社会背景がある.
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