特集 親子
親子の愛
宮崎 礼子
1
1日本女子大学
pp.538-539
発行日 1974年10月15日
Published Date 1974/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204896
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現代の親子をとりあげる前に,「親子間のおもい」に関して昔からいわれているものを「ことわざ」からみよう.それらは親子のあいだにおけるおもいのいつに変らぬ姿であろうし,民衆のおかれていた社会的経済的強制から歪められたものでもある.ことわざ4千の中から探したが思っていたより多くなかった.
可愛い! とにかくわが子は可愛いという親のおもい"鈍な子は可愛い""片端な子ほど可愛い""死んだ子に阿呆はない""自分の子には目口が明かぬ""這えば立て立てば歩めの親心"この親のおぼれぶり,子の甘えぶりに対して"可愛い子には旅をさせよ"と忠告されるわけだろう.親の子への情愛は掌中の玉(珠)としていつくしむ"子に過ぎたる宝なし""三人子持は笑うて暮す""死なぬ子三人皆孝行"ところが宝にはちがいないが,子どもを育てるのは苦労だとして"子をもてば七十五度泣く"いっそそんな苦労は子どもさえなければしないで済むではないかといえば,そうでもなくて"ない子では泣かれぬ"と泣くことさえも羨ましく思う人もいる.泣いて苦労しても育てれば"泣いて育てて笑うてかかれ"と老後は子どもにかかれるという家制度老後保障の意味がこめられている.それにしても"生みの親より育ての親""生んだ子より抱いた子"と子をはぐくむことが心を豊かにしていく訳で,だからこそ"父母の恩は山よりも高く海よりも深し"と形容される.
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