特集 医師会
私の医師会論
特に地域活動について
大渡 順二
pp.436-440
発行日 1973年7月15日
Published Date 1973/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204688
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医師会の地域保健活動を考えるといっても,いまの医師会の現状を無条件に肯定して,そのいびつな医師会に,どんな地域活動を望むか--というのでは,それは,木によって魚をもとめるに等しい.医師会の体質そのものをお互いに考え直していくのでなければ,何の前向きの議論もできない.逆にいえば,地域保健活動の問題を課せられる医師会は,そもそも,どんな医師会であるべきか.これは,医師と医師会の本質論にさかのぼる問題である.
第一に,医師(医療機関)は,今のように,私益していいかということである.日本の社会保険医療制度が開業医制度を中心に組みたてられて発達し,維新前からの殿様の御典医としての性格は,そのまま社会保険の御典医として継承されたため,いまでは,医療の営利主義,開業医制度について,国民の誰一人疑ってかからないところに根本的な過ちがある.そういう国民的意識の中で,日本の社会保険医療が開業医制を無条件に一方の大きな柱として組みこんで出発したところに,洋服のボタンの最初のかけ違いがあり,医師会の体質的な歪曲がある.だから保険医の本来的な地域活動と,保険医の営利主義の歯車がうまく噛み合わないことは,はじめからわかっている.
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