特集 健康権
権利としての健康
北野 博一
1
1愛知県心身障害者コロニー中央病院
pp.4-9
発行日 1973年1月15日
Published Date 1973/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204595
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健康とは
人間が生活して行く上で一番大切なものは,知的動物としての社会活動をするための種々の条件もさることながら,まず健康であることであろう.しかし自分が健康であるときよりも病気のときか体が弱ったときにしか,健康について考えないものであり,健康は一般に病気と対比されて論ぜられることが多いのである.しかし昭和45年の厚生省「保健衛生基礎調査」1)によれば,日本人の現代の意識は全年齢層を通じて「健康」こそ日常生活で最も重視すべきものとなった.またその理由としては「健康が人間生活の基礎をなすから」と答えたものが最も多くなっている.健康こそ本源的なものであり,人権の基本であると人々は経験的に認識したのである.
健康という言葉を常に使いながら,改まって「健康とは何か」と問われると,簡単には答えられない.その人のおかれている現在の環境なり,年齢によって,その答のニュアンスはちがってくるだろう.ある人は「病気にならないこと」と答え,ある人は「死なないこと」というだろう.人間らしい生活ができる体の状態だとも考えられる.健康の概念は幅が広いものであり,変遷もある.
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