特集 コミュニティ・ケア
ソーシャル・ワーカーとコミュニティ・ケア
阪上 裕子
1
1国立公衆衛生院
pp.635-638
発行日 1972年10月15日
Published Date 1972/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204556
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ソーシャル・ワーカーのコミュニティ・ケア観
「施設ケアにはどうしても限界があり,さりとて従来の居宅ケアにも欠点がある.ここで新しい概念として"コミュニティ・ケア"の必要性が論議された.」(日本ソーシャル・ワーカー協会第9回関東ブロックセミナー第一分科会(都市化と福祉サービス)の報告--同セミナー報告書,東京ソーシャル・ワーカー協会,1971. p. 19)
この一文には,ソーシャル・ワーカーがいま「コミュニティ・ケア」ということばをどう把えているかがきわめてあざやかに表現されている.この分科会に集まったソーシャル・ワーカーたちは,たとえば子どもの養育障害,心身障害者やねたきり老人の介護問題などを,都市化により家族とコミュニティの役割が変化するなかで深刻化し顕在化している問題として位置づけている.そしてこれらのニードに対応する福祉サービスのあり方として,「施設,福祉機関には棄民的機能,隔離主義の要素が多分にみられる.収容しっぱなし,飼い殺し,劣等処遇的性格を強く残すことを反省すべきだ」(同書p. 19)とする.一方,居宅保護は,日本の社会事業史のなかでは,保護の方法というよりむしろ保護の不在ないし家族その他への押しつけによる保護費用の節約の方法であったし分野によってはいまもその性格をもちつづけているのが実情であるから,「さりとて従来の居宅ケアにも欠点がある」といわざるをえない.
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