特集 コミュニティ・ケア
社会福祉とコミュニティ・ケア
副田 義也
1
1東京女子大学
pp.628-634
発行日 1972年10月15日
Published Date 1972/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204555
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1969年9月,東京都社会福祉審議会は「東京都におけるコミュニティ・ケアの進展について」という都知事の諮問にたいする答申を行なった.これは,コミュニティ・ケアという概念が,わが国の社会福祉の領域における公的組織によってもちいられた最初の例であった.これを契機として,今日まで,コミュニティ・ケアへの注目は加速度的に増してきている.各地方自治体の福祉行政を担当する部門,各地域の社会福祉協議会などの民間組織において,それぞれ行政・運動のありかたを決定するさいに,コミュニティ・ケアの発想を採用する例は多くなっている.そのかぎりでは,さきの答申は,大きい影響力をもったといってよい.
しかし,その答申におけるコミュニティ・ケアの概念は,概念としてかならずしも完全のものではなかった.すなわち,その規定は複数の解釈を許す曖昧さをいくつかの箇所でもっていた.さきの審議会を構成する委員たちのひとりとしてはたらく機会をあたえられた私は,自らの経験にもとづいて,その概念規定の不十分さは,大部分は,その時点で審議会にあたえられていた諸条件からしてやむをえなかったものであるとおもう.それは,一般的にいえば,知的領域において野心的な最初の試みが避けることのできない,いくつかの小さい躓きである.
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