特集 公衆衛生とエイズ
歪められた性革命
大島 清
1
Kiyoshi OHSHIMA
1
1京都大学霊長類研究所
pp.677-679
発行日 1988年10月15日
Published Date 1988/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207790
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85,000人を越した世界のエイズ患者を疫学的に分類すると,男性同性愛患者を主体とする欧米型,性比を1:1とするアフリカ型,それに,日本のように諸外国より遅発して,患者発生数の少ないアジア型の三型に分類することができるだろう.少ないといっても,増加速度は同じらしいから,日本もいずれはアメリカの轍を踏むかもしれない.それにしてもこの三型は,明らかに各領域の性文化を示すものとして興味深い.
性文化もさることながら,エイズにさらされた人間のおろかしさは,差別意識の中にありありとにじみ出ている.それもまた,その国の文化に由来するのだろう.カースト制の強いインドで,インド医学研究評議会の会長が,最近外国人とのセックスを禁止すべきだと発言したという事実も,如実に人間のおろかしさを物語っている.外国人とセックスさえしなければ,我々は大丈夫だ,とするところに,性への無知がある.あのカーマスートラの大らかな心はどこへ飛び散っていったのだろう.外国人とのセックス禁止どころか「禁欲をもって尊し」とする風潮が見え隠れしている.性文化と差別意識,これが,本章で筆者が強調したい点だ.
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