特集 公衆衛生活動と福祉の論理
公衆衛生活動と福祉の論理
橋本 正己
1
1国立公衆衛生院衛生行政学部
pp.6-9
発行日 1972年1月15日
Published Date 1972/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204401
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激動の60年代は高度経済成長と都市化の半面で,国民大衆の生活のなかにおけるさまざまの矛盾があらわになり,きびしく問いかけられて余すところなくさらけ出された感が深い.そのなかでも保健・医療にとりくむわれわれにとって,医療・保険・医育・医学研究など医学・医療の諸制度が温存してきた諸矛盾が,大学問題を契機として根源的に激しく問われるようになったことは記憶に新しいところである.このような社会環境の激しい変化のなかで公衆衛生活動もまたきびしい試練に立たされたことは当然である.とくにいわゆる公害の激化,人口の老齢化,医療技術の革新などによる傷病,死亡像の質的変化と地域の諸特性のヘルスニーズへの鋭い反映など,対象とする問題自体の質的な変化によって,新しい方法論とその社会的実践は強い社会的要請となった.だが保健所問題に端的に示されているように,公衆衛生行政はほとんど何らの改革もなされぬままに推移したことは全く弁解の余地のないところである.もとよりこの間に関係者のそれなりの努力がなかったわけではない.また公衆衛生活動の改革を考える場合,日本に独特ともいえる医療・医育制度の基本的矛盾が厚い壁となって立ちふさがっていることも事実である.しかしこの間に理念的には国際的なすう勢のなかで,包括医療の必要性とpositive healthの重要性が強調され,関係者の間でかなり理解されるようになった.
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