特集 保健所改革のポイント
保健所問題の焦点
ポイント15 予防接種と保健所—保健所の技術性
金子 義徳
1
1東邦大学公衆衛生学
pp.560-561
発行日 1971年9月15日
Published Date 1971/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204340
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近年における伝染病患者の減少は目覚ましいものがあるが,わが国がdeveloping countryからdevelopedcountryとよばれるようになったことはそれ程以前のことではない.いうまでもなく一国をこのようにわり切ることは難かしく,両者が混在していると考えるのが正しいかもしれない.保健所の方がたが伝染病対策その一環としての予防接種に大きな関心をもちその成果が今日をもたらしたといえるが,昭和45年名古屋の公衆衛生学会では,保健所は予防接種だけにかまっておれないという発言もでるくらいにその当面する問題はかわったといわざるを得ない.いうまでもなく予防接種の実施主体は市町村であり,保健所はその専門技術的援助と指導がたてまえであろうが,この点における保健所の役割の現状については筆者は疑問なきを得ない.大都市で衛生部をもつ所はともかく小さな市町村の予防接種担当課はどれだけの技術があるであろうか.極端にいえば法律できめられている予防接種を他のなすべき業務のなかにいかに支障少なくおり込みこれを消化するかが,精一杯のところではなかろうか.
一方,医師も,各種伝染病の減少に端的に示される予防医学活動の成果に対して,個人保健のみならず,集団保健の重要性に目をむけはじめ,そのための協力を惜しまなくなったこともまた事実であろうと思われる.
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