特集 予防接種の事故
予防接種補償制度の法的意義
成田 頼明
1
1横浜国立大学経済学部
pp.151-155
発行日 1971年3月15日
Published Date 1971/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204220
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はじめに
予防接種に伴なう発しん,発熱,後遺症,死亡などの事故は,今年になってから急にやかましい社会的・政治的問題となり,事故の被害者に対する賠償または補償措置を中心として,予防接種制度の抜本的な改善が要求されるに至っている.予防接種事故による被害の問題は,事象としては決していまに始まったものではなく,予防接種法が制定・施行された昭和23年以降にも存在していたし,それ以前にも存在していたのかもしれない.
しかし,これが急激にクローズ・アップされてきたのは,医学の進歩によって次第にその実態が明らかになってきたこと,および,このところ急速に深刻な問題になってきた大気汚染・水質汚濁などによる環境汚染公害,有毒食品・有害薬品などによる健康被害の続発により,国民の生存権をめぐる権利意識が著しく高まってきたことにより,事態を無為に放置してきた行政の責任を厳しく追及しようとする動きが活発化してきたためであるといってよい.種痘などによる事故後遺症の子供を抱えている親が「全国予防接種事故防止推進会」を結成し,精力的な活動を開始したことも,新聞やテレビのキャンペインとあいまって,制度改善への大きな起動力となったのである.このような情況のもとで,政府も,盛り上る世論に動かされて本格的な対策に取り組まざるをえなくなった.
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