教室めぐり・17 群馬大・公衆衛生学教室
衛生教育の行動科学的革新を
辻 達彦
pp.357
発行日 1970年6月15日
Published Date 1970/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204089
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昭和29年3月に,私は前任柳沢利喜雄教授(現千葉大医,農山村研究施設)の後をうけて国立公衆衛生院から赴任してきた.その間めまぐるしい公衆衛生事情の変転はおどろくほどである.医専から医大,さらに群大医学部として発展した組織のなかで,とくに地方大学の公衆衛生学教室というものの役割りに考えさせられるものが多い.
最近の大学紛争を契機として,ひろく叫ばれていることに,社会に窓をひらいた,開放された大学ということがある.その一端を受け持つのが公衆衛生学教室の仕事でもあると思っている.したがって研究者自身の個人的興味からはなれて,地域社会に出現する種々の公衆衛生的課題にいや応なしにまきこまれるのが現状である.安中市公害(東邦亜鉛工場による),渋川市公害(種々の化学工場による)など行政的に企画された,集団検診に協力参加してペースが乱されているのが,教室員全体の所感である.一方,外部からは地域社会の公害問題に,大学側の自主性のなさを非難する声があることもしらないわけではない.けれども,現実の地域社会のヘルスニードは多様であり,純粋に医学的見地から解決できるものはなにひとつないといえる.日本医師会が主張するごとく医学の教育,研究と社会的適用としての医療,実現手段としての医療保険という関連を考慮しなければ,単なる地域診断に終わってしまう可能性がある.
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