人とことば
国民の心身の健康を想う
三浦 運一
1
1京都府衛生研究所
pp.383
発行日 1968年10月15日
Published Date 1968/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203743
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今から23年前をふり返って,終戦当時の混乱と窮乏の状態を思うと,よくもわが国が今日のように復興したものだと思う。最近数年来の状態をみると,復興どころではなく,科学技術の革新とそれに基づく産業・経済の発展により,国民生活はわが国の歴史にみられぬほどの変貌をなしつつある。
その間,生活水準の向上と医学・公衆衛生の進歩により,国民の衛生状態は,かつて経験しないほど大幅に改善されたが,一面この急速な産業・経済の高度成長により,国民の健康福祉上新しい種種な障害が生まれてきた。すなわち,戦後まもなく起こった都市のし尿処理難に続いて,下水・産業廃水による河海の水質汚濁,工業の発展に伴う大気汚染,各種の工業中毒,都市の人口過密と住宅問題,交通難と交通災害の激増など,都市の環境悪化が急速に進み,農村では農業振興に伴う農薬の危害などのほか,人口の流出による労働力の不足と労働過重,地域によっては人口の過疎化が大きな問題となっている。
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