特集 都市化のなかの保健活動
大都市における地区衛生組織活動の展開とそれに伴う諸問題(事例)
橋本 博
1
1大阪市西成保健所
pp.288-294
発行日 1968年8月15日
Published Date 1968/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203718
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まえがき
住民の健康と生活を守っていくのには,住民自身の自覚と団結がなければその発展を望みえない。かかる意味で,大都市といえども地区組織活動は,公衆衛生の進歩発展のためにはどうしても欠く事のできない大黒柱である。
大都市では保健衛生面に対する不満がますます増大しつつあるにかかわらず,住民の組織活動はむしろ衰退してきているようにみうけられる。これらの問題点をさぐる意味で,昭和41年,第22回日本公衆衛生学会総会において"地区衛生組織活動の特性と行政の接点について"というテーマでシンポジウムが開かれた。これらの討議のなかで都市住民の生活環境の急速な変化,都市人口集中化に伴う人口構造の問題,行政機関のマンモス化によるコミュニケーションの不徹底などが原因して,地区住民と地域社会との結合稀薄化が起こり,地域活動に対する関心の低下,地域での少数活動家への業務の集中と,それに伴う地区指導者のボス化という現象が発生し,結局,地域組織活動の展開も都市改造との関連において検討されねばならないとしている。しかしながら,現実の社会でこれらの点をどこからどう打開して行くべきであるか。特に従来から困難視されていた大都市における住民の組織活動展開への諸条件などについて現在まで検討してきた点を報告したい。
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