談話室
地域保健と職業衛生
大平 昌彦
1
1岡大医学部衛生学教室
pp.680-681
発行日 1967年12月15日
Published Date 1967/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203584
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A村の場合
瀬戸内海に面した戸数560,人口3,000人余りの農業村。訪れる外来者を迎える自然は美しく,そのために村は観光事業にも力を入れている。しかしここは,ニューヨーク国際博の日本庭園以来,一躍注目を浴びるようになったA石の産地でもある。住民は農業のかたわら漁業も営んでいたが,最近急速に需要のたかまった採石,加工に従事するものがふえ,家内工業的な採堀から,協同組合組織による機械化も進んで,兼業から専業に転ずるものも多く,とうぜんのこととして珪肺問題が頭に浮ぶ。私たちの予備調査でも住民の健康への関心がかなり高いことが明らかとなった。
では従来どのような対策がとられてきたか。元来このK県は,保健婦の事業別,業務別分担制の確立していることで有名である。すなわち従来の保健所保健婦の地区駐在をやめ,各種業務単位の分担に切り換え,住民に刻する保健指導や衛生教育などはもっぱら市町村(国保)保健婦に委ねられている。これは近来とみに増加した保健婦業務のいわば上からの合理化,系列化と見られよう。
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