特集 住宅と健康
第8回社会医学研究会・主題報告と総括討議
開会のあいさつ
曽田 長宗
1
1国立公衆衛生院
pp.617-618
発行日 1967年11月15日
Published Date 1967/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203558
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1.すでに40数年以前,B. Chajesはその著Kompendium der Sozialen Hygiene(国崎定洞邦訳,社会衛生学綱要)の第3章・住宅の社会衛生学において,住宅問題ほど物理的生物学的衛生学と社会衛生学とのものの見かたの相違を明確に示すものはない,と述べた。その意味は,従来の物理学的生物学的衛生学が,ただ単に住宅のあるべき姿,Soll-zustandの探求にのみ止まろうとするのに対し,社会衛生学の立場は,この知識に基づきつつ,このような条件を満たす住居に住み得る者,逆にはその条件にかなわない不良住宅に住まざるをえない者がどれくらいいるかの実情,すなわちIst-zustandを明らかにし,現実にそのような住居生活を強いられている勤労大衆の居住条件を,いかにして改善向上させるかの社会的,技術的対策を考究するものでなければならないという主張である。
2.現在の勤労国民の居住状況を明らかにしようとするならば,まず居住状況の良否あるいはその度合を弁別する尺度を定めなければならないが,残念ながら今日広く認められている規準がない。たとえば,住居の広さ,わが国では1人当りの畳数などが一種の規準と認められているが,これだけで最後的断定をくだすわけにいかず,採光,通風,家内の設備,環境条件なども何らかの形で考慮されなければならず,試みとしては,採点法による住宅の不良度測定も行なわれている。
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