特集 保健所活動30年記念特集
保健所活動30年史
周辺からの提言
保健所活動にこう期待する
臨床医の立場から
臨床医と保健所を結ぶもの
毛利 子来
pp.526-528
発行日 1967年9月15日
Published Date 1967/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203535
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奇妙な関係
臨床医にとって,保健所は遠い親戚のような存在になっている。もちろん,保健所の仕事を理解しているし,その存在価値も認めてはいるが,とくに日常の診療には関係がないし,これといって注文をつけるほどの利害も有してはいない。せいぜい伝染病が発生したときと,健康診断や予防接種にかりだされたときに保健所を意識するだけで,そのほかの臨床活動は保健所なしにやっていけるのである。これは,わが国の臨床医学が治療に偏重しているためと,公衆衛生が臨床医学とは別の体系として成立した事情によるのであろうが,それにしてもたいへん奇妙なことといわなければならない。
いうまでもなく,予防と治療とは本来この程度の接触ではすまされない共通のものをもっているはずである。実際にも,もっとオーバーラップする面があってとうぜんである。それがこのように疎遠のまますまされているということは,医学の停滞を示すものにほかならない。かつて結核対策では,予防と治療は分ちがたく結びつき,そうとうの成果をあげることができた。いまはそういった姿がうすれ,両者の力が拡散しているように思われる。伝染病対策は赤痢をはじめとしてとうぜん重要であるし,母子保健はもちろん成人病・精神衛生などの新しい分野の開拓も課題となっている現在,予防と治療は以前にも増して固く結びつく必要がある。
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