特集 社会保障と公衆衛生の接点をさぐる
ろんそう
社会保障・公衆衛生相互の問題点
老人と離島僻地住民の健康と生活の向上のために
渡辺 孟
1
1長崎大学医学部衛生学教室
pp.385-386
発行日 1966年7月15日
Published Date 1966/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203282
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社会保障と公衆衛生とは,物の表裏のように,互いに国民の福祉に関して不可分の関係にあることはいうまでもない。それぞれの作用は,プラス,マイナスいずれの方向に対しても強く相乗する。現今のわが国のような公衆衛生のゆきづまりは,実は,社会保障制度の弱さにも起因しており,その劣化を招いており,しかもその逆もまた成り立つといえよう。たとえば,国民の傷病構造の変革に対処して発展しなければならない公衆衛生と,医療保障との現在のこの噛み合いの悪さと,その改革の遅さは,わが国の社会保障と公衆衛生に関する諸制度を崩壊させる,重大な因子ともなりかねない。
私は,老人の健康と生活に関する社会医学的な研究や,離島僻地住民の傷病構造,医療に関する調査などを通じて,公衆衛生,医療,リハビリテーション,公的扶助,社会保険,社会福祉などのモメントが,そこではバラバラで,悪循環さえじていて,互いに綜合化されて質的に止揚されるという,理想境からはるかに離れているという憂うべき様相をみることができた。
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