これからの開業医
離島僻地と医師
石井 清英
pp.72-73
発行日 1969年1月10日
Published Date 1969/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202518
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生命の振興と医師
"生命の振興"こそ道徳の根源であり,医療概念の拡大によっても明らかなとおり,"生命の振興"に直接たずさわる者が医師たちである.真の医師は生命振興の専門家でなければならないし,人間をその環境を含めて全体として把握し,その生前から死後まで一貫して把握する医師こそ,真に偉大な医師である.しかしながら世界的な傾向として,世間の名声や評価が,呼吸器系とか,消化器系その他の修理工的な医師に対してのみ高いことは悲しい事実である.またわが国では地域社会の人びとが自己の生命のみに注目して,他の人びとを顧みることが少なく,医師たちの生命すら軽視する事実も見のがすことはできない.これが離島や僻地の医療問題とからんでくる.
私たちが住む長崎県を含む九州地方は,離島僻地が多いことはご存じのとおりである.そのような場所にはそれぞれ独特の環境があって,住民の医療に生涯をささげる決意をもって赴いた医師が,あるいは去り,あるいは移り,あるいはさびしく倒れていく状態である.
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