特集 社会保障と公衆衛生の接点をさぐる
ろんそう
社会保障・公衆衛生相互の問題点
個人を忘れすぎた公衆衛生
本田 良寛
1
1済生会今宮診療所
pp.380-381
発行日 1966年7月15日
Published Date 1966/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203279
- 有料閲覧
- 文献概要
憲法を引っぱり出してもうしわけないが,第25条の②に,『国は,すべての生活部面について,社会福祉,社会保障および公衆衛生の向上および増進に努めなければならない。』と定められている。だからといって,行政面がおのおのの制度部門を,後生大事に分けてしまい,繩張りを作っているのはどうしたものであろうか。憲法で,社会福祉,社会保障,公衆衛生とあるのは,各制度を分けてしまえということではなくて,これらの制度の向上および増進に努めなければならない,ということである。
しかし,この制度の相互間に,有機的な,一貫した横の仕組みがあるかというと,今のところは,仕切られた壁しかない。現実に,繩張りがあるということは,これらにたずさわる人たちの怠慢と失政としか考えられない。低所得階層を対象として仕事をしていると,これらの制度の間における縄張りとか無関連が,いかに国民の最低生活を営む権利を侵しているかを,毎月のように嫌になるほど見せつけられるのである。生活保護法にすら該当されずに,道に倒れるまで見棄てられている現実があるということは,これらの諸制度が,自立可能な人々には役立ってはいるが,自立能力の弱い人々には,最後に倒れる時まで適用されないことを証明していよう。
Copyright © 1966, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.