特集 社会保障と公衆衛生の接点をさぐる
ろんそう
社会保障・公衆衛生相互の問題点
取り残されている肢体不自由児施設と民間福祉施設
宮坂 登志子
1
1東京小児療育病院
pp.377-378
発行日 1966年7月15日
Published Date 1966/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203277
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社会保障とは何か
社会保障とはなにか,という点についてはいろいろな考え方があり,厳格な意味ではまだ完全な意見の一致がない。ことに,社会保障という名で包括されている制度の内容なり範囲なりは,各国で異なっており,また,日本国内でもバラバラである。どの程度で,どういう内容の社会保障制度が実現されるかは,その国の国民経済の条件,財政の規模,国民の生活様式,慣習などによって異なってくるからであり,日本国内での問題は,日本における社会保障の構造体型自体の概念規定が,一致しないためであろう。
戦後,日本が大きく変化していったなかで,行政面での特徴は,社会保障制度が飛躍的に進んだことであり,社会保障制度に必要な生活保護,社会保険,国民年金などの支柱が一応そろったことであろう。しかし,国民のうちで最も弱い者の人権がどの程度に尊重され,その生活が健康であるように,国の責任でどの程度まで果たされているであろうか。多くの国民は,現在の社会保障制度の内容には満足できない。もろん,日本の社会保障制度を困難な社会的背景の中で企画し,今日に推進した人々の業績に対しては,深く敬意をはらうものである。しかし,日本の社会保障制度が,貧困な社会保障基盤の上にあたえられたことに,多く原因があるのであろうが,一応形をととのえた現在,早急に検討されねばならない問題であろう。
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