特集 社会保障と公衆衛生の接点をさぐる
主題—社会保障と公衆衛生の接点
社会保障と公衆衛生は車の両輪—生活保障と健康保障の2面からの考察
前田 信雄
1
1東北大学医学部病院管理学教室
pp.369-373
発行日 1966年7月15日
Published Date 1966/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203274
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社会保障と公衆衛生の概念と特色
社会保障というものは,一口でいえば,国民の最低生活を保障する国家的施策である。すでに貧困化して生活保護法の対象になるような人たちにたいしては,国および地方自治体が一定水準以上の「健康にして文化的な生活」ができるように,家計をまかなうに必要な金銭上の扶助,あるいは医療扶助のような現物的扶助を供与する。また,貧困者以外の国民一般にたいしては傷病や失業あるいは老令などの事故になったとき,保険組合などの組織が経済的な補償や所得の再分配などを行なう。これは,貧困化を防ぐことによって,国民全体の最低生活を保ち,個々の世帯の経済的生活を保障するものである。このように,社会保障には公的扶助と社会保険との二大機能がある。
他方公衆衛生というものは,究極的には,個人と社会全体の健康を保持するための国家的もしくは社会的施策である。国および自治体あるいは衛生行政と医療の諸機関が住民と一緒になって予防にかんする医学を実践し,傷病の予防,寿命の延長,健康や能力の保持増進という精神的身体的な面での生活の保障をおこなう施策である。したがって,社会保障のめざす目的も,公衆衛生の目的もひとしく国民生活を安定させることにある。社会保障は国民生活の最低保障によってこの目的を実現しようとし,それにたいして,公衆衛生は,国民全体という集団の健康維持を通じて生活安定に寄与しようというものである。
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