特集 住宅と健康
英仏の住居監視制度
早川 和男
1
Kazuo HAYAKAWA
1
1神戸大学工学部環境計画学科
pp.129-134
発行日 1984年2月15日
Published Date 1984/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206823
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■住宅政策と住居監視制度
住宅政策の目的は,人びとの生命の安全と健康を守り,人間としての尊厳を確保するにふさわしい住居を終局的に国家の責任で実現していくことにある.そのために,既存の不良住宅を修繕したり建てかえる,再び不良住宅が生まれないように厳しい住宅基準をつくり,これを守らない住宅は建てさせない,自治体や政府が自ら大量に住宅を供給する,上下水道・公園・緑地など住環境を整備する,土地の利用規制を厳重に行なって生活環境を保全するなどの諸政策として,住宅政策・都市計画がヨーロッパ諸国では発達してきたのである.そこにある認識は,健康な住居は基本的人権であり,また住居が貧しければ医療費・社会保障費などの需要がふえて福祉が成立しなくなる,さらに社会を構成する健康な市民が育たない,住宅を劣悪な状態にしておいたのでは文化が形成されず美しい都市はできない,よい住宅と都市をつくるのでなければ生活は豊かにならない,といった考えである.だからヨーロッパの都市計画は公衆衛生と住宅政策が車の両輪となった1).
ところで住宅政策が最初に登場した英国では,当初から「住居監視制度」が住宅政策の中の重要な要素として位置づけられていた.それは1872年の公衆衛生法(Public Health act)の中にうたわれ,その後の政策展開の中でよりいっそう大きな位置を占めるに至っている.
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