特集 変貌する農村の社会医学的研究—第6回社会医学研究会・主題報告と総括討議
巻頭言
宍戸 昌夫
1
1横浜市立大学公衆衛生学教室
pp.613
発行日 1965年11月15日
Published Date 1965/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203137
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第6回社会医学研究会総会は「変貌する農村の社会医学的研究」を主題として開催された。広い領域に多くの問題点を持つ社会医学の分野で,いかなる主題を選んで研究発表,討議の場を持つかということは,研究会自身のありかたに重要な関連を持つことであり,今回の主題設定についても数度の関東地区世話人会の検討,さらには全国世話人会の討議の結果得られたものであった。前回名古屋の総会では「住民の保健をいかに進めるか」という,いわば総論的な主題を3つの討論の柱に集約して討議が進められたが,今回は農村,とくに「変貌する」という現代の社会的変動の中で捉えた事象にスポットを当ててみようという意図にでたものである。いうならば昨年の成果を踏んまえての各論の展開を志向したものであった。
「変貌する」と規定された農村が果たしてどこが変わっているのだろうか,どの時点をとらえて,いつと比較するのか,などの疑問がすでに準備段階での論議を招いたことであったが,社会経済的にみたとき,農村は確かにある種の変貌をとげつつあるということは1つの見方として正しいであろう。また農村という地理的,平板的な観察は事態を正しく評価し得ないという論点もあった。むしろ農民ないしは農村地帯住民という人間を主体におくべきであるという考え方もまた1つの見解であろう。いずれにしてもわれわれは現在の農村にまつわるあらゆる現象を,歴史的な視点でとらえ,社会医学的検討の爼上にのせることに怠慢であってはならないと思う。
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