特集 綜合保健活動成立の条件—第22回日本公衆衛生学会総会シンポジウム
主題
綜合保健の条件は存在しない
石垣 純二
pp.575-577
発行日 1965年10月15日
Published Date 1965/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203128
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I.綜合医療を阻むものは多い
現代日本で綜合医療の必要性がつよく叫ばれる理由は理解できないこともないのです。自然科学の当然の宿命とはいえ,医学は分科しすぎました。その弊害が医学の応用面である医療につよく現われてきました。中でも,成人病の面に誇張的に現われています。
成人病たとえば動脈硬化性疾患一つとり上げてみましても,その成因についてはさっぱりわからないことだらけですが,とにかくその成因においても,従ってその予防と治療の点においても,患者本人の生活というきわめて多元的で捕えにくいものを抜きにしては一歩も進むことができません。成人病の多くのものについて,生活のうみ出しつくり出した病気という性格が明瞭になってくろにつれ,成人病対策を効率よく行うためには,疾病をもっと多元的に,生活的に,いうなれば綜合的にとらえ直さねばならないという反省が起こってきたのは,全く自然のなり行きといえそうです。ですから衛生教育家の立場からして,わたしは「綜合医療を」という最近の学界一部の声につよく共感し,歓迎すると同時に,残念ながら,現代日木において,綜合医療を阻むものがあまりにも多く強いので,綜合医療を成立させる条件はまったく存在しないとハッキリ結論したいのです。
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