特集 住民の保健をいかに進めるか—第5回社会医学研究会・主題報告と総括討論
主題報告
討論
pp.620-621
発行日 1964年11月15日
Published Date 1964/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202924
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青山(岡山大医・衛生) 行政的な対策は離島振興法などで,進められていくと思うが,その中にまたおくれた部分がつくられていくのではないか。こういうことを保健医療担当者はどんな目でみていかねばならないかを聞かせてほしい。
渡辺(長崎大医・公衆衛生) 1)離島の中の離島という所が長崎に多い。離島に所属した所で不便な島がある。こういう所にはキリシタンの子孫が多い。ことさらに,不便な所に隠れ住んだというのが多いので(人口は最近減りつつあるが),交通悪く,波荒ければ行けず,医師が非常に入りにくい。彼らキリシタンは貧しい生活でもあまり不服に思わない。病気にかかって死んでも,死ぬ方が生よりも神に近づくという点で価値を認め,死ぬことを何とも思わぬ。だから重病になつても医者を呼ばない。また舟を仕立てれば何千円もかかるということからも医者を呼ぶことをしない。死ぬ前に呼ぶのは神父であり,亡くなつてから,医師がいつて,死体検案書を書くというのが多い。住民自身に健康に対する積極性がない。神父を通じてやれば,命令一下検診にも100%でも出てくるが,神父がいわなければでてこない。2)離島の中の本島の人々のまわりの島に対する差別感が強い。青山氏のいうように,離島振興法によつて本島がよくなり,まわりの離島はおくれていく。3)こういう状態の下では医療担当者だけでは物を考えようがない。
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