特集 住民の保健をいかに進めるか—第5回社会医学研究会・主題報告と総括討論
主題報告
3.離島住民の保健の社会医学的問題
野村 茂
1
1熊本大学医学部公衆衛生学教室
pp.615-618
発行日 1964年11月15日
Published Date 1964/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202922
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わが国は四つの主島と佐渡島以下の島嶼よりなっているが,その総数は3,290島(水路部調査),そのうち,居住島は約450島,総面積9,200km2,総人口は約200万で,主として,瀬戸内と九州に分布している。これは優に1県の面積と人口に匹敵する規模であるが,島々は全国に分散し,また,各県,各市町村でもその行政区画はさまざまであるために,その存在は忘れられやすい。しかし,国民の保健と福祉はその住む所によって差別されてはならないのであって,国も地方自治体も離島の保健の実態を認識し,その対策にさらに積極的でなければならない。私は,ここで,全国離島の43%をもつ九州の離島の実態から,その保健と医療を考察したい。
離島は山村とともに典型的な僻地であるが,その位置,大きさ,気候などによって,島民の生活が規制される。島の特性は,その孤立性,隔絶性にあるが,これが島の住民の生活をとくに大きく阻害しているのが離島である。離島振興法(昭28)の離島指定規準は,島民の生活がつよく本土に依存し,しかも本土とのあいだの交通が不安定で,本土との最短距離が,5km(内海では10km)以上のものとしているが,離島の本質はその地理的な隔絶よりも,むしろ,社会的な隔絶性にあるのはいうまでもない。
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