病院図書館
—大和人士著—「離島の社会医学」
奥田 幸造
1
1公立能登総合病院
pp.93
発行日 1972年5月1日
Published Date 1972/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541204664
- 有料閲覧
- 文献概要
‘へき地の健康をいかに守るか’に共感する
国民の医療に対する関心が高まっている折がら,特に本書は貴重なしかも現代医療を考えさせる資料であると思う.私にとっては能登半島という過疎地帯の不採算性医療地域の多い農村へき地医療に挺身すること20年余,ことに私どもの病院の診療圏であり,七尾市対岸の能登島(人口約4000有余)はほとんど無医村に等しく,私ども常に巡回診療や出張診療に携っているものにとって,本書に深い感銘をおぼえた.瀬戸内海という波静かな比較的気候のよい地帯に比べ,われわれ能登半島という日本海の波荒く,しかも北陸の寒風にさらされている環境上の悪条件と,その上交通不便で医師の分布密度もきわめて低い地方と対比しながら興味深く読ませていただいた.
巡回診療船もレントゲンなどを塔載したり,かなりりっぱなものであるが,私どもの能登島でも,数年前厚生省のわずかな補助で,瀬戸内海のまねをしたわけではないが,全く小さな漁船ほどの巡回診療船(当時約200万円)をこしらえて,私もそのささやかな進水式にも出席した記憶があるが,その後,波荒き日本海ではこのような小さな船では対岸の七尾さえ患者を運べず,その後まもなくたった1人の若い医師も島を去り,この船は使用されることなく廃船となったことを思えば,まさしくこの‘済生丸’は著者のいう‘瀬戸内海医学’のために貢献すること大であるといわざるをえない.
Copyright © 1972, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.