論叢
公衆衛生の基盤についての哲学的考察—柏熊氏の再批判にこたえて(1)
小林 治一郎
1
1京都大学医学部公衆衛生学教室
pp.442-445
発行日 1964年8月15日
Published Date 1964/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202862
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■この小論のねらい
柏熊岬二氏が「地区診断における条件分析の論理と実用化1)」――小林批判への再批判――(以下「再批判と略称する)を書かれてから思わぬ月日がたってしまった。「再批判」のもととなった私の「地区診断における条件分析の論理と定式化2)」のなかで,私は「実例をあげる前に,それについて検討しなければならない重要な理論的問題が未解決のまま残されている3)」と書いた。その後,その「未解決の理論的問題」にとりかかっていたため,それが一段落つくまで「再批判」の問題に着手できなかった。それで「再批判」に対するこたえが思わず遅れてしまったのであるが,前者は本小論とも深い関係があるのでいずれ発表されることになると思う。
私は,柏熊氏が私への「再批判」を書かれたことに対して,深い感謝と敬意をはらうものである。「社会病理学という社会科学と自然科学の両方にまたがる分野を専攻4)」していられる同氏は,地区診断理論を進展させるために,私への「再批判」において,いろいろ重要な,基本的な問題にふれて居られる。同氏との批判,再批判というかたちでの討論が,公衆衛生の基本的な立場の掘下げについて有益な成果をもたらすと信じ,同氏への批判を再び書く。
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