綜説
科学体系のなかの公衆衛生学の位置と役割(その1)
水野 宏
1
1名古屋大学医学部公衆衛生学教室
pp.69-75
発行日 1963年2月15日
Published Date 1963/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202628
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I.はじめに
本誌26巻9号の母子衛生特集において,わたくしはそこにもられたテーマが,あまりにも臨床医学的に偏しており,「その内容は小児科の臨床雑誌が企画してもすこしもおかしくない,というよりむしろその方がふさわしいくらいで,この企画のどこに公衆衛生の専門誌の特徴があるのであろうか」という疑問を提起し,臨床医学的母子保健と公衆衛生学的母子保健とは区別さるべきものであるとの趣旨を述べた。編集委員は編集後記の中でこの小文をとりあげて,「この問題は公衆衛生全体の基本問題として,今後真剣にとりくまれる必要があります」と指摘したが,わたくしの真意もまさに,あの小文を足がかりにして公衆衛生学の本質についての論議に深さが加えられるようにとの願いにあった。
しかし何分にもあの特集においてわたくしに与えられたスペースは極わめて小さいものであったので,公衆衛生学の本質との関連について述べるゆとりはほとんどなかったといってよい。今回さいわいにわたくしの真意をさらに詳述する機会をあたえられたので,公衆衛生学の本質について,わたくしが平素考えているところをまとめて記してみたい。
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