人とことば
公衆衛生活動における民間団体の位置
森下 薫
pp.261
発行日 1970年5月15日
Published Date 1970/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204066
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わが国における公衆衛生への認識は,欧米のそれに比し著しくたちおくれたとはいえ,今日では,少なくともその理念について,学界はもちろん,行政方面でもかなり明確に把握され,また一般社会における理解も進みつつあることは事実である.そして,その理論づけはいよいよ複雑となり,概念も漸次拡大され,すべての医学的活動と結びつけようとする傾向さえみられる.理論は実際活動の方向づけの基盤となるものであるので,その展開は大いに尊重すべきであるが,問題はそれと実践とをいかに結びつけるかにあろう.
公衆衛生活動は,むしろ素朴なニードの実践を積み重ねることから始めるべきでないか.実践の責は,国,地方公共団体,民間団体および国民がそれぞれの立場で負うべきものとされるが,それらの実際活動に適切な体系が考えられねばならない.実践を効果的にするためには,形態的には有機的な組織,機能的には企画,情報処理,実施などについてのシステム化が要求される.国全体としては政府機関を頂点として,下部に至る行政体系が存在しうるが,実際的には保健所を中心とした活動となるであろう.すでにそのような体系で,実施されている公衆衛生活動も少なくないはずだ.ただ保健所は,性格上あるいは使命上,機能的に一定の制限を受けることがあるので,集団を対象とした活動に必要なサービス業務にあまり多くを期待し得ない場合がある.また,その人員配置の上からも,同様なことがいえる.
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