総説
医療制度と医師—診療所医師について
木村 慶
1
1大阪大学医学部公衆衛生教室
pp.48-51
発行日 1962年1月15日
Published Date 1962/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202483
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1.
将来の診療所はどうあるべきか,という論議が年々活発になってきている。いよいよ深刻さを加えてきた医療費問題の解決をはかるにも,また日本の医療制度全体が露呈している数々の矛盾を克服するためにも,このことは何としても避けて通れない問題の一つである。
健康保険の急速な普及,受診率の一年ごとの上昇,医療内容の高度化による健保医療費の増大は,国家財政政策の壁にぶつかったあげく,低医療費政策となって医療機関にはね返えってくる。そして病院・診療所問,診療所相互間の競合は激化させられる。医学技術の進歩は医療給付額を高めると同時に,他方診療所にも施設・設備の高度化を要求し,これを競争の手段の一つとさせ,逼迫した診療所経営にさらに圧力をかけることになる,現在出されている将来の診療所の構想は,この圧力をどう処理するかというところに一つの立脚点をもっていると考えることができる。
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