綜説
医療制度と医師の報酬—英国国民保健事業における医師の報酬をめぐつて
木村 慶
1
1大阪大学医学部公衆衛生学教室
pp.27-31
発行日 1961年1月15日
Published Date 1961/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202366
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いわゆる国民皆保険の実施も近く,これに伴つて医療制度の全面的な再検討は必至の趨勢にある。中でも医師に対する報酬支払制度の問題はその中心課題であるにもかかわらず,影響するところが余りに大きいためか未だ根本的な検討が加えられるには至つていない。
戦後新しい医療保障制度の体系が整備される過程を遡つてみても,報酬支払制度の改革を当然前提としなければならない問題が次々ととりあげられていながら,かんじんの支払制度には手がつけられていない。例えば昭和23年に発表された米国社会保障制度調査団報告書は,今後の健康保険制度推進のために医療費支払方式の問題が重要であることを指摘している。そして現行診療単位料金支払制度を批判して,それに代るものとして人頭割支払制,俸給制の二つをとりあげそれぞれの難点を述べ,結論としては,条件が整つており特に地方医師からの協力が十分ある地域において人頭割を実際に実験し,実行可能性があれば直ちにこれを実施することを勧告している。このようにかなり具体的な勧告が行なわれたにもかかわらず,その後の医療保障に関する各種審議会・委員会のこの問題のとりあげ方は,現行出来高払制の非は認めながらも当面はやむを得ないという不徹底なものにおわつており,これまでついに1つの実験も行なわれず,部分的修正以外の変革も企てられなかつた。
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