綜説
―公衆衛生最近一年間の進歩―老人衛生
田中 正四
1
1広島大学
pp.560-562
発行日 1961年10月15日
Published Date 1961/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202446
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1.まえがき
ここにかかげた見出しは編集者の方からつけてきたものである。しかし以下に書くことは必ずしも一年間の歩みではない。これを最初に断つておく。それから老人衆生ということばであるが,老人,すなわち老齢者とは人口統計では65歳以上の人をいうが,今日「老人病」と称される疾患は,このような老齢者のみに問題とされるものではなく,たとえば癌などは女子では35歳,男子では40歳ぐらいから激増して,その年齢層の首位を占めている。他の脳卒中,心臓病についてもその間の事情が大同小異である。
従つて最近では厚生省などでも,また学界でも「老人病」という表現をさけて「成人病」ということばを用いることが多くなつた。多くの職場でも脳卒中,癌,心臓病などの検診が40歳以上の年齢階級の人々に適用されている今日,老人院よりも成人病ということばが妥当であると考えられる。かく考えると老人衛生は「成人衛生」とする方が妥当であろう。
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