特集 子どもを護る―社会的不利への介入と支援
高校現場における貧困問題と社会的支援の現状
山田 勝治
1
1大阪府立西成高等学校
pp.202-207
発行日 2011年3月15日
Published Date 2011/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102051
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
西成高校のミッション
大阪府立西成高等学校(以下,西成高校)は,大阪市西部の西成区北西部の準工業地帯に位置する創立37年目の全日制普通科総合選択制の高校である.また,創立以来,障がいのある生徒の受け入れを続けており,「高等学校における知的障がいのある生徒の受け入れにかかる調査研究校」の5年間を経て,2006年から「知的障がい生徒自立支援コース」設置校として「共にまなび,共にそだつ」教育を実践し続けてきている.
創立から30年を経た2006年,本校は「格差の連鎖を断つ」というミッションⅰ)を掲げた.様々な研究や統計が明らかにしてきたように,家庭の経済的状況と子どもたちの学力や進学状況は密接に関係し合っている.まさに2006年は,バブル崩壊後に生まれた子どもたちが高校入学を果たした年であった.週刊誌では盛んに格差社会についての特集(週刊『東洋経済』2006年9月16日特集「日本版ワーキングプア」,2008年5月17日特集「子ども格差」,同年10月25日特集「家族崩壊」など)を組み,NHKは「ワーキングプア」を番組で取り上げた.こうしたメディアで伝えられる状況以上に,学校現場では親から子へと格差と貧困の連鎖する現実があった.西成高校では生徒自身がこうした厳しい経済状況や不安定な家庭状況を乗り越え,将来,市民として社会に参加し,誰にとってもより生きやすい社会を築くチカラをつけるために,育てたい生徒像として「将来のために今頑張れる生徒」の育成をミッションとして掲げた.そして,反貧困学習を中心とする人権学習や,キャリア教育に力を注いできた.
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.